H22論文試験(特許2)1.設問(1)について(1)製造行為 特許権者は業として特許発明の実施をする権利を専有する(68条)。乙の実施している 食品製造方法は、A工程、B工程、C工程として、それぞれa1工程、b1工程、c1工程を 含むため、甲の特許発明の技術的範囲(70条)に属する。 甲の発明は製造方法であり、乙はその方法を使用しているので実施(2条3項2号、3号)に 該当し、業として行っているのは明らかであるので、乙の行為は甲の特許発明の侵害となり、 甲は差止を請求することができる(101条)。 (2)販売行為 甲の発明は物を製造する方法であるため、その方法で製造した物についてもおよぶ。 したがって、乙が発明イの方法で製造した物を販売する行為は実施(2条3項3号)に該当し、 乙の行為は甲の特許発明の侵害となり、甲は差止を請求することができる(101条)。 2.設問(2)について (1)訴訟における主張 甲の特許発明は出願前に頒布された刊行物に記載されているので29条1項3号の無効理由 (123条1項2号)を有する。よって、乙は無効理由の抗弁(104条の3)をすることができる。 主張が認められれば差止めを免れる。 (2)特許法上の手続 乙は上述の理由により、甲の特許権に対して無効審判を請求(123条)することができる。 無効審決を得れば、特許権は遡って消滅し(125条)、差止めを免れる。 3.設問(3)について (1)上記(1)の主張に対して 甲は、特許請求の範囲を「a1工程、b1工程及びc1工程を含む食品製造方法」に減縮する 旨の訂正審判を請求することができる(126条1項1号)。訂正には126条3~5項の制限が 課されるが満たす。これにより、無効理由を解消しつつ、乙の実施している製造方法を 権利範囲に含めたままにできる。 (2)上記(2)の手続に対して 甲は、答弁書提出期間内に訂正の請求(134条の2第1項1号)をすることができる。訂正の 内容は上述の(1)と同様に「a1工程、b1工程及びc1工程を含む食品製造方法」に減縮 するもので、準特126条3~5項の制限が課されるが満たす。これにより、乙の実施している 製造方法を権利範囲に含めたまま、無効理由を解消することができる。 4.設問(4)について 甲の特許発明は製造方法であり、丙の実施しているのはその方法に用いる装置であるから、 実施(2条3項3号)には該当しない。したがって、直接侵害を主張できた乙の場合とは 大きくことなる。しかし、丙の行為が所定の要件(101条)を満たせば、間接侵害に該当し、 差止を請求することができる。具体的には、装置Pが専用品である場合(101条4号)や、 丙の主観による要件を満たす場合等(101条5号)には間接侵害に該当し、丙の行為を 差止めることができる。 以上 |